垂れて音流しの水面冬の水

垂れて音流しの水面冬の水

 

ー冬の水

秋に澄み渡った水は、寒さが増してくるにしたがいより磨きがかかり、研ぎ澄まされていく。暖かい時分の水は、生命の輝きを放っているが、冬のそれは命を脅かす厳しさを持っている。それゆえに、心身を清める神聖な力を感じさせる。

 

冬の水一枝の影も欺かず 中村草田男

裸眼夜みずたま光帰り花

裸眼夜みずたま光帰り花

 

ー帰り花


桜、梨、山吹、躑躅蒲公英などが、初冬の小春日和のころに時ならぬ花を開くのをいう。単に帰り花といえば桜のことで、他の花はその名を補いなどして感じを出す。忘れ咲。狂ひ花。狂ひ咲。帰り咲。


明るさやどこかにきつと帰り花 今井千鶴子

凍星

夜の底凍星ひとつはるか見る

 

凍星

冬に見る星は、空気が澄んでいるので冴え冴えとしている。北斗七星やオリオン座など、星座の形をくっきりと見ることができる。

 

凍て星の水にも落ちてまたたかず 五百木飄亭

冬木立ち

冬木立ち枝は遠目に絡まりぬ

 

ー寒林

冬の樹木「冬木」が群立しているさまをいう。落葉樹も常緑樹も
冬木ではあるが、葉を落とした冬枯れの裸木の木立は、鬱蒼と茂
る夏木立と対照的にものさびしいものである。

 

斧入れて香におどろくや冬木立 蕪村

冬至

電波塔夕焼け眺む冬至かな

 

冬至

二十四節気の一つ。十二月二十二日ごろにあたり、一年中で昼がもっとも短く、夜がもっとも長い日である。この日を境にして日脚が伸び始める。冬至粥。


あたたかき雨の降りたる冬至かな 俊朱

葱の青革のカバンに運ばるる

 

ー葱

日本では古くからいたる所で栽培され、もっとも庶民的な冬野菜の一つ。関東では根を深く作るので根深ともいう。ひともじ。


ひともじの北へ枯臥古葉かな 与謝蕪村

暖房

鍵開けて暖房ひとり唸りけり

 

ー暖房

冬の寒い日、器具を使って部屋を暖めること。今日ではスチーム
ヒーター、石油ストーブ、ガスストーブ、電気ストーブとさまざ
まな暖房器具が出回っている。

 

暖房や肩をかくさぬをとめらと 日野草城

 

冬の海

冬の海三角座りこもる息

 

ー冬の海

冬の海は、波が高く、暗く荒々しい。ことに北国の海は、雪雲が覆い暗澹としている。また晴天の日でも寒々とした青さを湛えている。冬の濤。


冬海や一隻の舟難航す 高浜虚子