緑と絵画
公園の池を前にして、女性が絵を描いていた。
公園には木々が立ち並び、葉を広げて、あるところでは重ねて緑の屋根を作っていた。池に降り注ぐ陽の光は、木陰にかこまれてより強く輝いてた。
女性は小さなスチールの椅子に座って、いくつかの赤い柄の筆を左指に挟み、塗ってその色を確かめては右手の筆をかえていた。度々訪れる通行者を全く気にしないほど、彼女は筆の運びに集中していた。
邪魔をしないようにと脇道をゆっくりと進む。その通りすがりに、まっすぐ歩こうと思いながらも、彼女の絵を肩越しにかいま見してしまった。足は動こうとしなかった。
キャンバスには、彼女の手に洗われた様々な緑の粒が秩序をなす、人のいない彼女だけの鮮やかな世界の欠片があった。彼女の手は、嬉しそうに軽やかに、新たな緑を加えていく。