冴ゆる夜上げるファスナー踏むひかり
冴ゆる夜上げるファスナー踏むひかり
ー冴ゆる夜
寒さが厳しく、あらゆるものに透き通ったような、凜とした、冷たさを感じること 。
風さえて今朝よりも又山近し 暁台
凍空の暗きに浮かぶ白き爪
凍空の暗きに浮かぶ白き爪
ー冬の空
本州を縦断する山脈の影響で、太平洋側は冷たい青空の日が多いのに対し、日本海側は厚い雪雲に覆われる日が多い。
冬空の水より深き朝かな 青木月斗
故郷きて変わらぬ姿寒昴
故郷きて変わらぬ姿寒昴
ー寒昴
冬の夜空に冴え渡る星は美しいが、特に牡牛座に属するスバル星の輝きは印象深い。「すばる」はもともと日本語で星が集まってひとつになるという意味。
冬田暮れあかり運びし電車かな
冬田暮れあかり運びし電車かな
ー冬田
稲を刈り取ったあと、切株も黒くなって荒寥とした田をいう。
雨水も赤くさび行冬田かな 太祗
冬景色光を添える白の月
冬景色光を添える白の月
ー冬景色
草も木も枯れはてた冬の景色である。枯木ばかりの山や、草が枯
れ伏した野原など寂寞としたものがある。
夕暮を惜む隙なし冬げしき 支考
雲とけて影を薄める冬茜
雲とけて影を薄める冬茜
ー冬茜
単に「夕焼」といえば夏の季語だが、「冬の夕焼」「春の夕焼」「秋の夕焼」と一年中季語としてある。冬の夕焼は、枯木立や建物のコントラストが美しく、束の間ではあるが印象深い。類題に「寒夕焼」「寒茜」もあるが、冬の夕焼に比べると、より寒中にある感が強い。
手元まで闇の来ている冬茜 廣瀬町子
影の層たすは足跡冬木立
影の層たすは足跡冬木立
ー冬木立
冬木の立ち並んでいるものをいう。
砂よけや蜑のかたへの冬木立 凡兆
日々の孤独 闇でうごく
日々の孤独 闇でうごく
求めたはずの時間 身体は弛緩
行ったり来たり とまる物語
つまらないね
無音に包まれたまま 立ち上がるのはまだ
もてあそんでるのは もてあましてるから
あの日の僕に嫉妬 あの時気づけばきっと
なんてね
もうすこし こころのこし こうしているよ
赤い凧風を孕むも眠りし子
赤い凧風を孕むも眠りし子
ー凧
本来凧は子供に遊びというよりは、地区対抗の競技で相手の糸に絡ませて切り合う凧合戦が行われた。ことに四月の長崎の凧揚げは有名である。紙鳶。鳳巾。いかのぼり。いか。はた。奴凧。
凧かけてさびしき夜の柱かな 土朗