ステップを踏む彼女

 

白い砂浜に黒いワンピースの女性が背筋を伸ばして裸足で立っている。

髪は長くてうつむいている顔は見えない。

彼女はなにかに耳をすますようにじっとしていたのだけれど、風がやむのと同時に倒れるように身体を傾けて脚を前に出した。

顔をあげた彼女は助走をつけるようにステップを踏み、くるりとまわりながら両手をひらいて片足で跳んだ。

黒髪がみだれてスカートがゆれる。

小さな影が彼女のステップを追いかける。

音もなく着地した彼女は手をのばしてなにかをやわらかく抱きしめ、次のステップへながれていく。

絶え間ない動きのなかで目をつむる彼女はこの上なく楽しそうに見えた。

 

 

 

故郷きて変わらぬ姿寒昴

故郷きて変わらぬ姿寒昴

 

寒昴

冬の夜空に冴え渡る星は美しいが、特に牡牛座に属するスバル星の輝きは印象深い。「すばる」はもともと日本語で星が集まってひとつになるという意味。

 

 

冬景色光を添える白の月

冬景色光を添える白の月

 

ー冬景色

草も木も枯れはてた冬の景色である。枯木ばかりの山や、草が枯
れ伏した野原など寂寞としたものがある。

 

夕暮を惜む隙なし冬げしき 支考

雲とけて影を薄める冬茜

雲とけて影を薄める冬茜

 

ー冬茜

単に「夕焼」といえば夏の季語だが、「冬の夕焼」「春の夕焼」「秋の夕焼」と一年中季語としてある。冬の夕焼は、枯木立や建物のコントラストが美しく、束の間ではあるが印象深い。類題に「寒夕焼」「寒茜」もあるが、冬の夕焼に比べると、より寒中にある感が強い。

 

手元まで闇の来ている冬茜 廣瀬町子

日々の孤独 闇でうごく

日々の孤独 闇でうごく

求めたはずの時間 身体は弛緩

行ったり来たり とまる物語

つまらないね 

 

無音に包まれたまま 立ち上がるのはまだ

もてあそんでるのは もてあましてるから

あの日の僕に嫉妬 あの時気づけばきっと 

なんてね 

 

もうすこし こころのこし こうしているよ

赤い凧風を孕むも眠りし子

赤い凧風を孕むも眠りし子

 

ー凧

本来凧は子供に遊びというよりは、地区対抗の競技で相手の糸に絡ませて切り合う凧合戦が行われた。ことに四月の長崎の凧揚げは有名である。紙鳶。鳳巾。いかのぼり。いか。はた。奴凧。


凧かけてさびしき夜の柱かな 土朗