図書館

灰色のカーペットに、書架が向かい合うように置いてある。いくつものペアが互いの距離を等しく保ち、番号を振られて館内に並んでいる。書架は天井まではなくて大人の身長ほどで、その上には蛍光灯が並行している。喋る人はいなくて、新聞を開く音やバーコードを読み取る音がたまに聞こえた。

目の前の地理のコーナーには、エジプト、トルコ、ギリシャ…とさまざまな国について書かれた本がある。本を開けば、訪れた事のない国についての詳細が載っていて、その文字の連なりはめまいを引き起こす。

未知の一つは、図書館という存在のほんの一砂であり、自らの世界は更新を迫られる。終わることのないアップデートに追いつくはずもなく、すぐさま未知に軽く飲み込まれてしまう。

本を閉じて、また開くことを思い、しばらく途方に暮れてみた。

 

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