バベルの図書館

“図書館”のおまけとして

図書館の文章を書いていて、ボルヘスのバベルの図書館が浮んだので、思いつきで気になるところを引用してみる。

バベルの図書館について思うことはあるけれど、書くには恥ずかしい。(ので引用だけ)

 

バベルの図書館

すべてのことがすでに書かれているという確実さは、われわれすべてを無に帰し、幻と化する。たったひとつの文字の読み方も知らないくせに若者たちが本の前にひれ伏し、荒々しくページにキスしている地方のことをわたしは知っている。悪疫や、遺伝的不適合や、山賊になりさがることの避けられない巡礼などが人口を減じてきた。年ごとにひどくなる自殺のことはすでに述べたと思う。おそらくわたしは老年と恐れにあざむかれていようが、人類は―唯一無二の人類は―絶滅への途上にあり、他方図書館は永遠につづくだろうと思われる。輝き、孤独で、無限に、完全に不動で、貴重な書物にみち、無用で、無窮に、ひそやかに。

 

 わたしはこの古い問題にあえて次のような解答のヒントを提出しよう。すなわち、図書館は無限でしかも周期的である。もし永遠の旅人がどの方向かにそれを横切るとすれば、数世紀の後に、同じ本が同じ無秩序でくり返されているのを見出すだろう。(その無秩序は、くり返されて、秩序を構成するだろう。秩序そのものを。)私の孤独は、この風雅な希望を喜んでいる。