古本屋

「全十九冊千円」と書かれた札が、ビニール紐で括られた本についている。本は無造作に店頭に平積みされていて、そこだけ見れば古紙回収に出しているようにも見える。細長い店内には、壁一面の本棚と、間を仕切るように天井までの高さの本棚があって、どこも本に溢れている。載りきらないものは床に平積みされていて、分類は何もしていない。客はいない。

商店街に来るたびに、この古本屋は不思議な気持ちにさせる。というのも、通りに並ぶ店はどこも客を呼び込むのに必死で、多くの商品を多くの人に買ってもらおうと躍起になっているが、このお店はただ泰然と構えているだけで、世の価値観が全く通用していないのだ。経営にどんなカラクリがあるか知らないけれど、忙しく動く街のなかで動じることのないこの古本屋をとても愉快だと思う。

 

 

f:id:may88seiji:20120418145714j:plain