少年とシャボン玉

交差点の近く、建物の玄関とアスファルトの間に少年が立っている。

少年は、小さくて黄色の筒を足元の洗面器につけて口に運んだ。筒からは大小さまざまなシャボン玉が放たれて漂った。あるものは道路にぶつかり、あるものは浮いたまま弾けた。少年はシャボン玉を見届けると、筒を足元の洗面器に運ぶ。その動作を飽きもせずに繰りかえしている。

少年はなぜひたすらシャボン玉を吹きつづけるのだろう。

少年とともに、何度目かのシャボン玉の一群を見届けた。やはりというか、シャボン玉のひとつひとつはまるで意思をもつかのように動いた。その時、シャボン玉のひとつが群れを飛び出すと風に乗って舞いあがった。次の瞬間には、宙に溶けるようにきれいにその環を閉じた。

もしかしたら少年はシャボン玉というより、その動き、風を見ているのかもしれないと思ったが、それはわからない。

少年はシャボン玉を吹きつづけている。

 

 

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