猫と童話
街で猫に出会った。
店が並び人通りも多い道の端で、猫はまるまっていた。車が通っても動じず、見おろす視線を睨み返すほどふてぶてしい。そんな猫を見て、ある童話を思い出す。何度死んでも、何度も生き返る猫の話だ。
童話にはふてぶてしくて、モテモテの猫が出てくる。猫は、王様や旅芸人、女の子にどろぼう、そしてめすねこに生き返るたびに愛される。けれど、彼はその誰をも嫌い、ただ自らを愛して死ぬ。つまり天上天下唯我独尊猫の話。
そんな猫がある生き返った時、白いねこに出会う。その白ねこは彼に興味をしめさず、ツンとしている。そして彼はその白ねこに惚れて物語は結末へと動き始める、というのが話の大筋だ。
目の前では、猫はまるまったまま眼を閉じている。傍若無人というのがぴたりと当てはまる。離れてからも少し見ていたのだけれど、綺麗なお姉さんにも可愛い女の子にも猫は全く関心を示さなかった。
もしかしたら童話は実話で、あの猫はいつかのふてぶてしい猫だったのかもしれない。帰り道の途中、佐野洋子さんの本がまた読みたくなった。