気まぐれに好きな詩を載せる 「もらい物は何もない」

もらい物は何もない

 

もらい物は何もない、すべては借り物

借金で首が回らないほどだ

自分の代金を

自分の身で支払い

命の支払いに命を投げ出すことになるだろう

 

もうそういうことになっていて

心臓も返さなければならないし

肝臓も返さなければならない

指だって一本一本どれもこれも

 

契約の条件を破棄するにはもう遅すぎる

借金はわたしから身ぐるみ

それこそ皮ごと取り立てられるだろう

 

借りを背負った他の人たちの群れにまぎれて

わたしは世界中を歩き回る

翼の返却を迫られて困っている人もいれば

葉っぱの清算をいやおうなしに

しなければならない人もいる

 

借方には、わたしたちの身体の

すべての組織が含まれている

まつげ一本、茎一本といえども

返さずに持っているわけにはいかない

 

賃貸対照表は正確で、何も見逃さない

どうやらわたしたちは

無一文で取り残されることになりそうだ

 

ただ、どうしても思い出せない

いつ、どこで、何のために

わざわざこんな金勘定の口座を

開くことになったのか

 

それに対する抗議を

人は魂と呼ぶ

そして、この魂だけが

貸借表に載っていないただ一つのもの