スクランブル交差点

「廻る世界の中心は、動いているわけでもなく、静止しているわけでもない」と言った人がいる。例えば独楽の中心がそれにあてはまる。彼曰く、その中心には舞踏、があるらしい。そんなことを思い出した話。場所はスクランブル交差点。

交差点の四方の信号が青にかわると、大勢の人が堰を切ったように道路に流れ込む。それぞれが、それぞれの向こう側へと歩いていく。わたしも、人混みに押されて道路に出たのだけれど、中心に出来る空白の部分へと逃れて、とどまってみた。信号はまだ青い。周囲を廻るように人が流れて、その向こうには止まった車たちが並んでいた。

信号が点滅を始める。その瞬間、つまり周囲に人がいなくなる時に、舞踏という景色が見えた気がした。とどまりたい気持ちをおさえつつ、急いで歩道を渡った。

車が発進して排気音やらエンジン音で騒がしくなると、道路に廻る世界はなくなっている。舞踏もなくなっている。たぶん、わたし、は動くものと静かなもののすき間にいて、それが舞踏、なのかもしれない。

渋谷のスクランブル交差点では、ニューヨークのタイムズスクエアでは、もっと大きく、その何かがみえるのではないかと思った。

 

 

 

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