気まぐれに好きな詩を載せる 「読書する人」

読書する人

 

誰が知ろう 彼のことを

その顔をこの現実からそむけて

第二の現実に沈めているこの男のことを

ただ 豊かな頁が素早くめくられるときにだけ

その現実は時おり激しく中断される

 

母親でさえもが確かではないだろう

そこで自分の陰影にひたっているものを読んでいる男が

はたして彼なのだろうかと そして

「時」を持っていたわれわれがいったい何を知ろう

彼にどれだけの「時」が消え去ったかを

 

最後にやっと彼は面をあげた 書物のなかに

とどまっているものを 自分の高さに拾いあげながら

そして彼の眼は 外部のものを受け取るというよりは

与えながら そこに出来上っていた豊かな世界に

つきあたっていたのだった

ちょうどひとりで遊んでいたもの静かな子どもが

急に外部の世界の存在をしるように

けれども既にととのえられた彼の表情は

いつまでも彼方にとどまっていた 

あの第二の現実のなかに