気まぐれに好きな詩を載せる 「一目惚れ」

一目惚れ

 

突然の感情によって結ばれたと

二人とも信じ込んでいる

そう確信できることは美しい

でも確信できないことはもっと美しい

 

以前知りあっていなかった以上

二人の間には何もなかったはず、というわけ

それでもひょっとしたら、通りや、階段や、廊下で

すれ違ったことはなかったかしら

 

二人にこう聞いてみたい

いつか回転ドアで顔を突きあわせたことを

覚えていませんか?

人ごみのなかの「すみません」は?

受話器に響いた「違います」という声は?

―でも二人の答えはわかっている

いいえ、覚えていませんね

 

もう長いこと自分たちが偶然に

もてあそばれてきたと知ったら

二人はとてもびっくりするだろう

二人の運命に取ってかわろうなどとは

まだすっかり腹を決めないうちから

偶然は二人を近づけたり、遠ざけたり

行く手をさえぎったり

くすくす笑いを押し殺しながら

脇に飛びのいたりしてきた

 

しるしや合図はたしかにあった

たとえ読み取れないものだったとしても

三年前だったか

それとも先週のことか

木の葉が一枚、肩から肩へと飛び移らなかっただろうか

何かがなくなり、見つかるということがあった

ひょっとしたら、それは子どものとき

茂みに消えたボールかもしれない

 

ドアの取っ手や呼び鈴に

一人の手が触れたあと、もう一人の手が

出会いの前に重ねられたこともあった

預かり所で手荷物が隣り合わせになったことも

そして、ある夜、同じ夢をみなかっただろうか

目覚めの後すぐにぼやけてしまったとしても

 

始まりはすべて

続きにすぎない

そして出来事の書はいつも

途中のページが開けられている

 

                   ヴィスワヴァ・シンボルスカ