雑文

ステップを踏む彼女

白い砂浜に黒いワンピースの女性が背筋を伸ばして裸足で立っている。 髪は長くてうつむいている顔は見えない。 彼女はなにかに耳をすますようにじっとしていたのだけれど、風がやむのと同時に倒れるように身体を傾けて脚を前に出した。 顔をあげた彼女は助走…

言葉の射程距離

言葉には射程距離がある、その考えを放ったらかしにしていたので書いて整理してみようと思う。 射程距離とは、言葉で“表現したもの”と“受け手に想起されるもの”の幅のことだ。その差は往々にして誤りを生む。 例えば、ある人が「マック」と言ってマクドナル…

『競売ナンバー49の叫び』つづき

前回の記事で、『競売ナンバー49の叫び』の“エントロピー(熱力学第二法則)”と“ミュートのついたラッパ”のことに言及していなかったので、考えた事を補っておこうと思う。 競売ナンバー49の叫び (ちくま文庫) 作者: トマス・ピンチョン,志村正雄 出版社/メ…

私がつくる幻想に暮らすわたし

先日、トマス・ピンチョン『競売ナンバー49の叫び』の話をして、内容が中途半端だったので要点をまとめてみようと思う。 『競売ナンバー49の叫び』を読んで気づくのは「私がつくる幻想に暮らすわたし」ということで、そのことを中心に書いていく。 作中には…

星の王子さまごっこ

“星の王子さまごっこ”をご存知でしょうか。 ほとんどの人が、いやすべての人が “non” とこたえるだろうと思う。というのも、“星の王子さまごっこ”は『le petit prince』を常に持ち歩くほどサン=テグジュペリが好きな人、が教えてくれたささいな遊びだからだ…

なあ、僕と共鳴せえへんか?

「あなたにとって、他者とはなんでしょうか?」 昨日、そんな質問が会話に出てきた。その時、質問はわたしに向けられたものではなかったのだけれど、わたしならばなんてこたえるだろうと考えてみた。 考えてみると、「なあ、僕と共鳴せえへんか?」という言…

川上未映子さんの謙虚さ、あるいは巫女であること

川上未映子さんの文章が好きで、エッセイをよくつまみ読みする。四冊ほど、ゆるやかに気ままに読了している。昨日、枕元に転がっていた魔法飛行を読んでいてそう気付いた。同時に、心地良くつまみ読み出来る魅力はなんだろうかと考えた。 ひとつ、川上未映子…